日中の暑さが尾を引く夏の夜、浴衣を身にまとい、手を引かれながら人ごみをかき分け、夜空に打ち上げられる花火をじっと見上げるーー毎年汗ばむ季節が訪れるたびに、そんな思い出が鮮明に蘇ってきます。

日本では夏と花火が密接な関係にあるように、海外でも花火が夏の風物詩となっているのはご存知でしょうか。アメリカの独立記念日は良く知られているイベントのひとつですが、バンクーバーで毎年開催されている、「Honda セレブレーション・オブ・ライト(Honda Celebration of Light Fireworks Festival)」は今年で25周年を迎える世界最大規模の花火の祭典です。

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日中にはミュージカルやカルチャーパフォーマンスなど、30分から1時間ほどのアクティビティやイベントが用意され、夜は目玉イベントでもある花火が打ち上げられるのですが、ただ打ち上げられる花火を楽しむだけではありません。毎年異なる3カ国がノミネートし、国対抗で花火の技術性を競い合うという、少し変わった花火大会なのです。

日本文化のひとつでもある花火を、日本以外の国で楽しめる場所があるという事実は非常に嬉しいものです。けれど、日本国外で花火を見たとき、同じ花火でも差異を感じることがあります。それは何かと考えると、「風情」の有無ではないか、と思うのです。

日本の花火大会と言えば、賑やかだけれど、なぜか静寂に感じる夜、街中にドーンと重厚感のある音が響きわたります。たとえ花火が見えなくても、その音が聞こえてくるとふと立ち止まり、思い思いに感じる何かがあります。その感じる何かこそ、風情ではないかと思うのです。空気感なのか、温度なのか、明確な答えは持ち合わせていませんが、その風情こそ、花火が持つ最大の魅力のように感じます。

風情が無いなどと言いながらも、異国の地で花火を見るというものは気分が良いものです。今年は中国、ブラジル、カナダがノミネートしていますが、どの国が優勝するのか、家族や友人など大切な人と一度は見届けたいものです。

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Honda セレブレーション・オブ・ライト
日時:7月25日(土)、28日(火)、8月1日(土)
場所:English Bay, Vancouver

 

Honda セレブレーション・オブ・ライト
本展の公式サイト。出演アーティストやスケジュールなどイベント詳細を公開している。
文:細川依里