ファッションからクリエイティビティが失われたといわれてかなりの年月が経ちます。ファストファッションの台頭、グローバリゼーションによる個性の均一化、ビジネス本位制・・・、その理由はいくつもありますが、わたしたちを惹きつけてきたクリエイティビティの不在は、ファッションそのもののダイナミズムまで奪ってしまったようにも見えます。

そんな状況のなか、東京・渋谷のセレクトショップ「N id」は、クリエイターの意志を広くそして長期にわたり発信してきたことで、作り手と買い手の双方の厚い信頼を得てきました。その「N id」がこの8月に、新たなスペースとしてローンチしたのが「n id a deux」です。

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ショップに入って時間を過ごすときに感じられるのは、なんともいえない居心地のよさです。世界中から集められたファッションの才能のまわりには、フィンランドのバーチ材を使った家具や様々な瓶に生けられた植物が彩りを添えます。五感すべてを刺激するものばかりです。

「n id a deux」の「deux」(ドゥ)はフランス語の「2」、そこに「a」がつくと「ふたりで、一緒に」という意味になるそうです。ショップから漂う雰囲気は、モードやクリエイティブという言葉から想像される“敷居の高さ”ではありません。むしろ、他者を受け入れる“寛容”といっていいでしょう。それはショップに訪れるひとびとの多様性にもよく表れています。ファッションファンのみならず、海外からの訪問者、そぞろ歩きの途中のカップル・・・。きっとここには、いまのファッション界が失ってしまった「作り手の顔」が存在するのでしょう。

ファッションの本質とは何か? クリエイティビティはもうあり得ないのか? そんな疑問を解き明かしてくれるいくつものヒントを、「n id a deux」から見つけてみてください。

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■ n id a deux
住所:東京都渋谷区神南1-3-2 不二ビル1F
電話:03.5784.4644

■ 関連サイト
「N id」公式サイト
セレクトした世界各国のアイテムをスタイリング中心に表現しています。「N id」の感性を知る入り口といえます。
http://nid-tokyo.com
 
「WAKA WAKA」と「Building Block」
「n id a deux」のインテリア/アイテムとして印象的なふたつのブランドを紹介しましょう。「WAKA WAKA」はロサンゼルスをベースに活躍する、デザインを主としたコンセプトチーム。フィンランド産のバーチ材の家具は日本の室内と好相性です。
http://www.ikoikospace.com

幾何学的なデザインと上質のレザー。「Building Block」はKimberyとNancyのWu姉妹によるデザインスタジオです。中でもシンプルで高品質なバッグは世界的に評価をあげています。彼らもまたロスで活動しています。
https://building–block.com

文:和坂康雄