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前回はペルセウス座流星群についてご紹介しましたが、夜空の明るい都心での観察には向きませんでした。もともと、星空観察と街を明るく照らすあかりは、相容れない関係にあります。

都心の明るい夜空でも、十分に楽しめる天体観測をご紹介します。

 

「光害」という言葉をご存知でしょうか?道路などを照らすはずの明かりが上方向に漏れてしまうことで夜空が明るくなり、星が見えなくなってしまうことを言います。星空が見えなくなるだけでなく、本来暗いはずの夜が明るくなってしまうことで、動植物や昆虫の生態に影響が出る可能性もあります。最近では、鳥取砂丘で開催されるアートイベントの目玉として光のタワー計画が登場しましたが、「光害」を危惧する意見が集まったことで、計画は中止されることになりました。

 

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光害がさけられない空の明るい都心でも、十分に楽しめる天体があります。月や惑星、それに明るい星たちです。夏から初秋の時期のおすすめは、はくちょう座のアルビレオという恒星です。肉眼では一見ひとつの星のように見えますが、望遠鏡で見るとふたつの星が寄り添った「二重星」であることがわかります。アルビレオの美しさは昔から有名で、宮沢賢治は「銀河鉄道の夜」の中で、この2つの星をサファイアとトパーズにたとえています。

 

星座を構成する星と違って日に日に位置を変えていくのが惑星。今の時期は、日没直後の西の空低いところに土星が輝いています。美しい環で有名なこの惑星の写真を見たことのある方は多いと思いますが、実際に望遠鏡をのぞいてみると、10億キロメートル以上の遥か彼方に浮かぶその姿に、写真とは違う印象をきっと抱くことでしょう。また、9月27日は「中秋の名月」。夏から秋への季節の移ろいを感じながら、ゆっくりとお月見を楽しんでみるのもよいでしょう。

 

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都心でも、ぜひ星空を楽しんでみませんか。普段都心に暮らしていると、周りに高い建物が林立していて、そもそも夜空を見上げる機会があまりない、という方も多いかもしれません。私が副代表を務めている「天文学普及プロジェクト『天プラ』」というグループでは、森ビル株式会社と協力して六本木ヒルズで星を観る「六本木天文クラブ」を毎月開催しています。

 

六本木ヒルズには、海抜270メートルの高さをほこる屋上展望台「スカイデッキ」があります。ここなら、高い建物に邪魔されずに、広い夜空を楽しめるというわけです。

 

「天文クラブ」という名前ですが、会員制ではなく、開催日に会場にお越しいただければどなたでも星をご覧いただけます。ご希望の方は、まずは六本木ヒルズ森タワーの展望台「東京シティービュー」へ。屋上展望台「スカイデッキ」にでると、六本木天文クラブのスタッフが望遠鏡を準備してお待ちしています。

 
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© 六本木天文クラブ

 

直径10センチの望遠鏡と直径15センチの双眼望遠鏡を使って季節季節の見やすい天体をご覧いただきます。また望遠鏡の順番を待つあいだは、肉眼で楽しめる星空をスタッフがご案内します。星数の少ない都会の空は、星が少ないぶんだけ目当ての星を探しやすく、むしろ初心者向けかもしれません。しかしそこには確かに、時に何十年何百年と宇宙を旅してきた星からの光が届いています。日常の中に降り注ぐ星の光を意識して、また望遠鏡で集められたその光を網膜に直接取り込んで、宇宙の中の私たちという存在に思いをはせてみてください。

 

六本木天文クラブの星空観望会は、毎月第4金曜日の夜に開催しています(曇天・雨天の場合は中止)。またこれ以外にも、流星群や中秋の名月など季節の星空に合わせて特別に観望会を企画することもあります。観望会に来てくださる方は、たまたま六本木ヒルズを訪れた人や、観光客も多く、まさかここで星空観察ができるとは思わず予想外の場所で星を見られたとおっしゃいます。参加無料(ただしスカイデッキへの入場券は必要)で、予約や登録は特に必要ないので、仕事帰りやデートに六本木に来られた時には、ふらりと星空観察に立ち寄ってはいかがでしょうか。

 
 

■「六本木天文クラブ スカイデッキ星空観察会」
開催日時:毎月第4金曜日に開催 19:00〜21:00 ※雨天・曇天時は中止
場所:東京シティビュー「スカイデッキ」(森タワー屋上)
費用:無料 ※ただし東京シティビュー/スカイデッキ(一般2,300円)への入場券が必要
参加方法:時間内に「スカイデッキ」へお越しください

 
 

(文・構成/長倉 克枝)