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眠る場所が安全でないと睡眠が抑圧されてしまうのですが、その大きな理由は睡眠中に意識レベルと体温が著しく低下して、全身の筋肉が緩むため。「どんなことが起こっても我が身は安全!」と思える場所、少なくとも、主観的に「安全だ」と安全保障できる場所でないと人は安眠できないのです。つまり、理想の寝室とは「物理的にも心理的にも自分が心から安心して眠ることのできる環境であること」がポイントになります。確かに、見知らぬ人たちとの雑魚寝や、幽霊屋敷で快眠することが難しいことは容易に想像できますよね。

理想の寝室とは「物理的にも心理的にも自分が心から安心して眠ることのできる環境」のこと

 

安全確保ができたうえで、次に整えたいのが物理的な環境条件。睡眠に影響を及ぼす環境因子は様々ですが、物理的環境条件の中では『温湿度・音・光』が3大環境要因としてあげられます。特に、光は睡眠の質にダイレクトに影響を及ぼす重要な因子となるので、正しい知識をもってコントロールすることがマストです。

 

睡眠に関わる光の要素は「明るさ(照度)」と「光の色(色温度)」の2つ。照度も色温度も高い青白い光は人を活動的な気分にさせて思考力を高めるといわれ、逆に暗めで色温度の低い暖色系の光は人の気持ちを落ち着かせ、眠りへと誘うといわれています。大きな蛍光灯が天井の真ん中にあり、部屋全体を煌々と照らしているタイプの照明は約500~700ルクス程度の明るさがあるといわれていますが、就寝前に500ルクス以上の明るさの光、特に蛍光灯のような青白い光を浴びると、別名「睡眠ホルモン」と呼ばれる「メラトニン」の分泌が抑制されて入眠が妨げられてしまうので、切り替えが必要です。

 

また、人は内臓の温度である深部体温が低下することで体が眠りモードになるのですが、青白い光は深部体温下降抑制効果もあるといわれており、照度も色温度も高い照明はダブルで快眠を遠ざけてしまうことが分かっています。せめて眠る1時間前からは、なるべく照度も色温度も低い照明を利用することが望ましいので、調光可能な照明や間接照明、アロマキャンドルなどを活用するようにしましょう。

 

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快眠をサポートする寝室づくりの知識で意外と誤って取り入れている方が多いのが「遮光カーテン」の使用。私たちの体は朝方にかけて体温が少しずつ上昇し、起床の準備を始めます。その際に、外界が明るくなるに伴って寝室内も明るくなっていくことが爽やかな目覚めに欠かせない要素なのですが、遮光カーテンは外から入る朝日を一切遮ってしまうため、目覚めが悪くなってしまうのです。

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様々ある睡眠のお悩みの中でも最も多いのが「朝すっきり起きられない」というお悩みなので、遮光カーテンを既に使用しているという方の場合は、就寝するタイミングで顔にかからない足元などを10cm程度開けておきましょう。実際、ある実験では、光が入るレースカーテンを使用している人の7割以上の人が「寝起きがいい」と答えています。

 

私たちの脳の視交叉上核に備わる生体時計は完全に光に依存して時を刻み、体に各司令を送っているので、夜は暗く、昼は明るくというメリハリをしっかりつけることが快眠への近道なのです。お客様を招くリビングのソファやダイニングテーブルは家具のひとつひとつにこだわるけれど、寝室は誰も見ないのでコーディネイトは無頓着だったという方もいらっしゃるかと思います。自分が人生の1/3の時間を過ごす空間であり、日々の疲れやダメージを修復して癒し、翌日のエネルギーを充電する大切な空間である寝室を、ぜひ一度見直してみてくださいね。快適な睡眠空間がつくる睡眠の深化は、明日の健康、キレイ、やる気を最大限にまで引き上げてくれます。光のコントロールから生まれる睡眠の魔法を存分に活用して、理想の人生を楽しみましょう。