呪文を唱えると魔法の杖から光が放たれて、オモチャたちが自分たちの意思で動き出すようになる・・・そんなディズニーが描いてきた魔法の世界を、ディズニー自身が科学技術の力で実現しようとしています。

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見える光で無線通信コミュニケーションができる(Visible Light Communication=VLC)は、高い周波数を持つLEDの特性を利用して、光をあてた相手とネットワークでつながったり、様々なコントロールができたりする技術です。可視光線を使った通信技術は、すでに病院や工場など、無線を使っている場所を限定してわかるようにしたいといったニーズがある場所で活用が始まっていて、実はそれほど目新しい技術というわけではありません。ですが、ディズニー・リサーチが目指しているのは、アイデアよりも実用性の部分。低コストで安全、そして環境にやさしい無線ネットワーク技術の開発で、使用するターゲットもオモチャに限定されています。
 
LEDを採用した理由は、素早くオンオフが切り替えられる点や、狙った相手に狙った情報だけを送信することができる点です。無線を目に光に置き換えるだけでも、いつの間にかのっとられて勝手に通信が使われたり、別のオモチャがいきなり動き出してケガをさせたりといったことを無くすことができます。

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開発を手掛けるのは、ウォルト・ディズニーの研究機関であるディズニー・リサーチで、これまでにもドローンを使った空に浮かぶ巨大な操り人形を動かす技術などを開発しています。そもそもディズニーは、EPCOT(エプコット)と名付けられた実験的な未来都市の開発を長らく目指しており、フロリダのディズニーワールド・リゾートにあるトゥモローランドは、そうした未来技術が実現する世界をテーマに作られています。ディズニー・リサーチはその実現を目指すための研究開発組織であり、映画「トゥモローランド」で描かれているような未来を本気で実現しようとしています。

 

 

ディズニー・リサーチのプロジェクトを紹介するページでは、具体的にどんな使い方をするかの例として、特定のオモチャだけに限定して可視光線でネットワークするプロトコル「LED-to-LED Software Protocol」や、LEDライトで光る魔法の杖に反応して色や動きが変わる「Magic Princess Dress」, LEDで描く光の文字でスマートフォンにメッセージを送る「Toy and Smartphone」などが掲載されています。
 

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動画ではさらに具体的に、オモチャのミニカーのライトを光らせるとタブレットにメッセージが表示されるデモなども紹介されていて、すでに実現に近いことがわかります。さらに、光の色によってオモチャの動きを変えたり、色を重ねることで反応を変えたり、夢のあふれるアイデアが、これからどんどんひろがっていきそうです。

 

##関連リンク
ディズニーリサーチ
ディズニーワールドのトゥモローランドの世界を実現すべく、ウォルトディズニーが運営している科学技術の研究開発機関。
 
Visible Light Communicationプロジェクト(英語)
ディズニーリサーチのプロジェクト紹介ページの一つ。LEDを使った可視光通信でオモチャを動かす技術「Linux Light Bulbs」の紹介と応用事例が紹介されている。
 
映画「トゥモローランド」
ジョージ・クルーニー主演のディズニー作品。ウォルト・ディズニーが目指した実験的な未来都市EPCOT(エプコット)をテーマにドラマが繰り広げられる。

 
 

text: 野々下 裕子