世界中の大学や医療機関で、がんの治療法や治療薬の開発が進められていますが、残念ながらまだ十分な状況だとは言えません。がんに対する関心も日本は死亡原因の一位というのもあって比較的高い方ですが、それでも十分に認知するには様々な広報活動が必要とされています。
 

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そうした活動のモデルになりそうなのが、オランダの癌協会らが行っている、インタラクティブ・サンドバッグを使った「FIGHT CANCER」というユニークなプロジェクトです。サンドバッグに表示されたがん細胞を打ちのめすボクシングゲームを通じてがんへの関心を高め、さらに治療研究機関のための寄付金を集めようとしています。
 
インタラクティブ・サンドバッグ本体は、モーションセンサーと衝撃センサーを内蔵したサンドバッグの表面に、punchable LEDという光をドットで表示する回路をはりめぐらしたもの。見た目はサンドバッグ型のライトにも見えますが、ドットの組み合わせで表面に映像が映し出せるようになっていて、パンチの数や力、当たった方向などによって表示される光が変化する仕組みになっています。
 

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プレイヤーは自分の年齢やライフスタイルをあらかじめ入力しておくことで、かかりやすいリスクのあるがん細胞がサンドバッグに表示されるというのもあって、自然とパンチにも力が入るというもの。パンチによって細胞が破壊され、寄付金が集まるというルールですが、がん細胞の強さは研究に必要な寄付金額によって設定されていて、集計金額がリアルタイム会場に表示されるようになっています。
 
がん細胞を表す光の動きは目まぐるしく変化し、プレイ中はDJサウンドが流れるので、ボクシングのトレーニングとしても十分楽しめるようになっているのだとか。それも一つの狙いで、インタラクティブ・サンドバッグは様々なジムから貸し出しが依頼されているそうです。

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がんに侵された身体を救うには、薬や放射線治療などで癌細胞を破壊する必要がありますが、いずれもそう簡単な治療方法ではなく、痛みやだるさなどの副作用に耐える必要があり、さらには精神的な忍耐も必要とされます。インタラクティブ・サンドバッグを製作したデザイナーは、「病気と闘う患者たちの気持ちが少しでも共感できればと思ってサンドバッグの形にした」とコメントしています。
 
病気の治療は見えない相手との闘いでもありますが、実際のパンチで病気と闘うインタラクティブ・サンドバッグは、闘病に必要な気力を生み出すツールにもなるかもしれません。
 
 
##関連リンク
Fight Cancer
オランダの癌協会とデザイナーが協力して始まったプロジェクトで、企画の経緯やインタラクティブ・サンドバッグの仕組みなどが紹介されている。
 
オランダ癌協会
がん治療に関する活動を行うオランダのNGO組織。「FIGHT CANCER」のプロジェクトを運営している。
 
世界がんデー
WHOによって毎年2月4日に設定されている世界がんデーの公式イベントページ。日本でも様々な関連イベントが開催されている。
 
 

text: 野々下 裕子