平等院鳳凰堂 ©joyphoto.com

平等院ではこのほど、国宝である鳳凰堂壁扉画や、梵鐘*1、雲中供養菩薩像などを収蔵する平等院ミュージアムの照明にもLEDを導入。文化財を照らすあかりを一新しました。
 
近年、重要文化財や歴史的建造物の照明に、LEDが使用されるケースが増えてきています。平等院鳳凰堂や清水寺のライトアップ設備、厳島神社の境内や回廊の照明、奈良県・當麻寺の伽藍三堂の内部照明など、名だたる寺社においてLED照明の導入が進んでいます。
 
LEDを導入する寺社はなぜ増えているのでしょう。
 
実は、LEDには「所定角度の範囲で発光させることができる」「虫が集まりにくい」「文化財などを劣化させにくい」といった文化財の展示に最適な特性があるのです。
 
「所定角度の範囲で発光させることができる」のは、多くのLED照明が反射板を使用せずに利用することができるため。狙った場所を的確に照らせるLEDは展示品の見せたい場所をフォーカスして照らすことができます。
 
「虫が集まりにくい」「美術品などを劣化させにくい」のは、LEDの光に紫外線が含まれないためです*2。紫外線には色の分子を分解する作用があり、物の色を褪せさせてしまいます。しかし、紫外線を含まないLEDであれば美術品の状態を良好なまま保つことができるのです。
 

平等院鳳凰堂 ©joyphoto.com

平等院鳳凰堂 ©joyphoto.com

平等院ミュージアムはさらに文化財の「見やすさ」にもこだわり、新しい技術を使ったLEDを採用しています。梵鐘を照らす照明には「美発色」機能が追加され、極限まで自然に近い見え方を演出。また、器具を調光することで細かい模様を鮮明に見せ、梵鐘に写り込む影を軽減させています。
 
「鳳凰」と「雲中供養菩薩像」26躯の演出では、光を絞って展示物のみに当て、床や壁に映る多重影を解消。細部まで見やすい加工を施しています。
 
省エネルギーで電球が長持ちという特性もあるLED照明。効果的な演出と物理的な特性によって、経済面でも物理的な面でも文化財の保護に役立つLED照明は、今や寺社にとってなくてはならないあかりとなっているのです。
 
*1 梵鐘:除夜の鐘などに用いられる釣鐘。
*2 一部のLEDは例外的に紫外線を含む場合があります。
 
 
#リンク
特定非営利活動法人 LED照明推進協議会 Webサイト
LEDの特性を紹介しています。
 
パナソニックのプレスリリース(平等院ミュージアム鳳翔館に LED照明器具を納入)
平等院に導入された製品情報の詳細情報をご確認いただけます。
 
日本のあかり文化を、デバイスの歴史から考える – 考えるあかり
『学芸員のための展示照明ハンドブック』の著者、藤原工さんによる公開講座「あかりからLEDへ 人をとりまくひかりの変遷」の一部を紹介。
 
 
(文:大川 祥子)