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季節性感情障害(Seasonal Affective Disorder; SAD)とは、ある特定の季節のみ、うつ病に似た症状が出てしまう脳機能障害の一種です。「季節性うつ病」とも呼ばれ、秋から冬にかけては別名「冬季うつ病」、あるいは「ウィンターブルー」とも呼ばれています。
 

日照時間、日照量が減ってくる秋から冬にかけて出現する「ウィンターブルー」。1月にピークを迎え、春になると自然に回復へ向かいます。

日照時間、日照量共に少なくなる10月頃から少しずつうつ症状が出現し、1月頃にピークを迎え、昼間の時間が増えてくる3月か4月頃、春になると自然に回復へ向かいます。実は高緯度地域に住む女性の発病率が圧倒的に多く、「NYからカリフォルニアに行くとなくなる」というニュースが以前あったというほど緯度と有病率の間には関連性があるといわれているのです。
 
ウェーデンやフィンランドなどの高緯度地方では冬季の日照時間短縮に伴って、抑うつ症状、過眠、過食などを特徴とする季節性感情障害の発症が認められており、民族差はありますが、北の地域にこの症状を抱える人が多く存在すること、そして大体緯度が同じだと同じ%で存在することが分かっています。
 
この冬季うつ病の日本人有病率は13%程度。日本でも主に女性が発症しやすい障害のひとつとして知られています。しかし、残念ながら冬季うつ病は発症しても医療機関にかかる人数が少ないことが特徴で、再発を繰り返してしまうケースが多いのです。
 

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症状としては強い眠気に襲われ、人によっては人と会話できない状態になってしまい、登校拒否や社会的引きこもりになってしまうことも。過度の眠気以外にも、意欲と集中力の低下、不活動、過食、体重増加による肥満などの症状も同時に表れます。「食欲の秋」という言葉では片づけられない過食の傾向として特徴的なのは、炭水化物を含むスナック類に対する欲求が非常に高まることです。
 
また、1日の中でも夜にかけて炭水化物の摂取増加が報告されています。夜遅い時間にヘビーなものを摂取すると消化器官が食べたものを消化しようと活発に動き出すため深部体温が上昇し、どんどん体は休息モードから遠ざかってしまうので、不眠のスパイラルに陥って悪循環まっしぐらです。実際に寝付けたとしても体をメンテナンスするような深い睡眠である徐波睡眠の出現は少なく、質は悪い状態。これでは睡眠時間が健康を育む時間にならないどころか、半ば失神しているだけのような生産性のない非常に勿体ない時間といえるでしょう。
 

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冬季うつ病が発症してしまう背景には、太陽の光の量が少ないことによる覚醒ホルモン「セロトニン」欠乏が関係していると考えられています。このセロトニンは「元気の源」とも呼ばれている物質なので、脳内のセロトニン機能が低下すると落ち込みやすくなったり、ネガティブ思考になったり、やる気や協調性がなくなったりしてしまうのです。
 

日中は太陽の光を浴びる、深呼吸する、沢山笑う、これら全てが抑うつ状態を解放する「元気の源」を分泌する効果があります

逆に、セロトニンの脳内濃度が高まると、人は抑うつ状態から解放されて活動的になれることが分かっているので、10月からは意識的にセロトニンの分泌を促すような生活スタイルを取り入れることがマスト。まずはセロトニンの原料となるタンパク質を朝食時に毎朝しっかり摂ること、さらに、なるべく歩いたり公園でランチを食べたりして日中は太陽を感じること、そして食事中はしっかり噛んだり休憩中に深呼吸をしたり、人と会話して大笑いしたりして日常生活の中にリズミカルな動きを取り入れること。これらはすべてセロトニンの活性化につながるアクションなので、可能な限り毎日の習慣に根付かせてくださいね。

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それでもなかなか自分では改善が難しい場合は、必ず医師に相談をすること。治療法としては「高照度光療法」が有効とされています。5000~1万ルクスの高照度の光を朝30分~2、3時間見続けることで睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を抑制し、同時にセロトニンの分泌を活性化させて、神経細胞のレベルから活力を注入するのがこの光療法の特徴です。
 
強い眠気と過食、不活動の状態を繰り返していると自尊心がどんどん低下し、メンタルにかなりの負荷がかかってしまいます。1人で抱え込まず、周囲の人や専門の人に気軽に相談するようにしましょう。