そう遠くない未来、21世紀を代表するアートは光を使って空間に描かれた3D彫刻と言われるようになるかもしれません。モバイル広告に関連する技術を開発しているAdtile Technologies社を設立したエンジニアのNils Forsblom氏は、スマートフォンの背面にあるライトを使って、空間に3Dアートを描けるアプリ「Air Pencil」を開発しました。
 

 
光の残像現象を使って空中に絵を描くパフォーマンスは、以前からたくさんあります。かのパブロ・ピカソも1949年に自身の制作した彫刻を懐中電灯の光でペイントした写真を公開しています。2015年にはThe Skillman & Hackett とGoogleのチームによって開発された、最新のVR用ヘッドマウントディスプレイとVR空間に3D画像が描けるツール”Tilt Brush”を使って、ディズニーアニメの作画を手がけたアニメーターのグレン・キーン氏が『リトル・マーメイド』のアリエルと『美女と野獣』のビーストを描いて見せました。
 

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それらと「Air Pencil」の違いは、シンプルで、ハイエンドな技術を使わずに、身近なスマートフォンというツールだけで3Dアート作品が創造できるところにあります。「Air Pencil」は空中に線を描いた時の動きを正確に感知し、XYZの方向から記録できます。立体視に必要なカメラをオプションで付けるといった必要もありません。アプリ内に保存した作品はあらゆる角度に動かして、360度の方向から見ることができます。たとえば、正面からは光のうずまきに見える線が、横から見るとトンネルのように長く伸びている立体的な作品を創るのに、どのような動きをすればいいかといった、試行錯誤も簡単にできます。もちろん、小さな子供でもスマートフォンを使ってどこでも光の絵画を描くことができ、落書きをしても怒られることはありません。
 

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同社は「Air Pencil」を3D広告やFacebookが研究開発を進めているオンラインコミュニケーションのVR化に向けて開発を進めています。すでにベータ版が開発者向けに公開されており、新しい機能の搭載も視野に入れられているとか。
 
いずれにしても、3Dアート向けのツールが今後もいろいろ増えることで、21世紀のピカソが生まれるかもしれませんね。
 
 
##関連リンク
Air Pencil
開発者のNils Forsblom氏による製品の解説ブログページ
 
Tilt Brush
空間に3Dの絵画が描けるVR向けツールとして注目を集め、Googleとタイアップしたことでも話題に。
 
Light Painting Photography
ライトペインティングで制作された写真やアニメーションなどを紹介するサイト。様々な関連ツールやアイデアを見ることができる。
 
 
text:野々下裕子