ユニバーシティ・オブ・ザ・ピープル(UoPeople)は、2009年にShai Reshef氏が設立した非営利のオンライン大学(本部:カリフォルニア州パサディナ)。世界初の学費無料を目指す大学と謳っており、2014年には米国教育省が認定した品質認証機関DEAC(Distance Education Accrediting Commission)の認証を取得しています。

 

インターネットが遠隔教育に適していることは多くの人が認めるところでしょう。MOOCs(Massive Open Online Courses)は言うに及ばず、テキスト(文章)や図表、写真、映像を配信する仕掛けを持っていて、質疑応答のための双方向性を備えたメディアですから、テキスト(教科書)を読んで自学自習し、レポートを送って採点してもらい、必要に応じてスクーリングで講義に参加する従来型の通信制大学では難しい学習環境を提供することができます。インターネットはその黎明期から離れた場所にある複数の電子計算機を相互接続するがゆえに、知を伝搬するものとして期待されていたようです。

 

近年、パソコンの処理能力が向上し、映像や音声の圧縮技術が発達して、しかも通信回線のブロードバンド化が進んだことから、オンライン大学の「教材」も音声やビデオが多用され、インタラクティブ性が高く、テレビを使った遠隔教育よりも参加意識の高い受講が可能となっています。

 

180カ国、約5,000人が学ぶというユニバーシティ・オブ・ザ・ピープル(UoPeople)は、インターネット・アクセス環境に大きなバラツキがあることから、ウェブカメラもマイクも使いません。テキスト(教科書)の購入も不要となっています。

対象は、フルタイムの仕事などで時間的な余裕がなかったり、居住地の近くに通える大学がなく、経済的にも厳しい状況にありながら、学ぶことによって卒業後に仕事に就き、社会に貢献して収入を得ることを目指す人々。授業料は無料ですが、入学や試験には費用が必要で、年額1,000ドル程度を負担する必要があります。MBAの場合、1コースあたり200ドルで12コースを受講すれば2,400ドル。アメリカのMBAの平均的な額の1割に満たない額で、しかも分厚い教科書を何冊も購入する必要もありません。

受講生の住んでいる国や本人の経済状態によってこれらの費用は変動し、貧しいとされる国からは安く学べるよう配慮されています。さらに現在は、シリア難民についてはこれら費用を免除する措置が取られているそうです。

人々が教育を受けて就業することを目的としてるため、分野はコンピューティング、ヘルスケアやビジネスなどに絞られています。クラスの人数を絞り、8週間の講座を9週目のテストで締めくくるのですが、学生同士は世界中に離れて学びながら助け合うよう奨励されています。

 

厳しい環境下で、あるいは働きながら世界各地で学ぶ学生には強い克己心が必要なはずです。紹介ビデオ(下記)によれば学生の満足度は95%とのこと。質の高いコースと学習経験が提供されていることを伺わせます。

 

 

参考情報

UoPeople

University of the People offers MBA with no tuition charge

Berkeley to accept University of the People graduates

Learning from the ‘people’s universities’

Online ‘university of anywhere’ opens to refugees