Godspotサイトより

スマートフォンを持ってドイツへ行くなら教会を探すのがよいかも知れません

宗教改革の理念が流布する上で、グーテンベルクの印刷技術が大いに役立ったとされています。21世紀に大きく普及したWi-Fiやスマートフォンが教会のあり方にも影響してくるかも知れません。各家庭に時計が普及するより前には、教会の鐘が人々に時刻を伝えていました。教会の尖塔は電波塔ではありませんが、人々がコミュニケーションをするために集う場所として、教会に新しい役割を付与する可能性もあります。
 
外務省サイトによると、ドイツ全体の宗教はカトリック(29.9%),プロテスタント(28.9%),イスラム教(2.6%)となっており、人口の4割ほどは特定の宗教を信仰していないようです。特に若い世代にこの傾向が強く、プロテスタント教会は強い危機感を抱いている模様。Godspot導入の背景には、こうした事情があるようです。
 

GodspotサイトよりGodspotサイトより

利用者も利用登録は求めらず、無料でアクセスポイントに接続できますが、最初だけその教会の情報を掲載したページにリダイレクトされます。その後は、教会やプロテスタントの「広告」を見せられることはなさそうです。
 
教会にWi-Fiホットスポットを設置している国は、スペインやイギリスなどほかにもあります。いずれも教会から足の遠のいた人々や、訪れたことのない世代を引き寄せることが目的です。日本の寺院や神社の中にもWi-Fiを導入しているところが増えています。日本人や海外からの観光客を増やして、参拝料などを徴収することに興味がある宗教施設も多いのではと思われますが、欧州の教会は、各種の記事などを読む限り、観光客ではなく、市民に訪問を促し、信仰に関する関心を高めて欲しいという思いが強いように思われます。
 

「ホットスポット砂漠」ドイツの事情

実はドイツは「ホットスポット砂漠」とも呼ばれています。ecoの調査(2014年)では、国内の無料ホットスポットは約15,000カ所で、人口1万人に1つという比率です。これは国土の広いアメリカの5分の1、ホットスポット大国のイギリスの28分の1に当たるとか。ドイツ旅行では、無料ホットスポットを探すのは難しいようです。
 
ドイツにはStörerhaftungという法律があって、Wi-Fiホットスポットを運営する個人や企業は、その利用者(買い物客やら観光客やら、カフェでMacBook Airを開く若者やら)が、そのネットワークを使って違法行為を行うと、アクセスを提供した個人や企業にも責任が及ぶようなのです。ネットと違法行為は残念ながら切っても切れない関係にありますし、著作権侵害に厳しいヨーロッパですから、ホテルもレストランもカフェも図書館も、無料Wi-Fiの提供に消極的なのだとか。
 
しかし、無料Wi-Fiの提供は観光客を誘引するだけでなく、人々の生産性を上げる上でも重要だということで、ドイツ政府はこうした法律を今秋から緩めて無料ホットスポットの普及を促すと報じられています。
 
プロテスタント教会は、こうした動きにいち早く対応した形になっており、3,000教会にGodspotが導入されれば、国内最大のプロバイダーに躍り出るとのこと。
 
かつて、教会はそこに住む人々が集う場所だったはずです。広くて荘厳で静かな空間があり、神に近い場所で、多くの場合、大勢が座れる椅子もありますから、人々はさまざまな交流をしていたに違いありません。アイデアを交換し、商談を行い、家族のことを質問し合ったりしていたことでしょう。
 
動機はさて置き、人々がタブレットやスマートフォンを持って教会に足を運ぶようになれば、通信中のコミュニケーションの相手は世界のどこか離れた場所にいたとしても、そこで出会った人と交流を始める可能性はあります。若者が初めて教会を訪れて、少しでも建物や内部に興味を持ってくれればという思いもあるはずです。
 
 
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