昭和29年(1954年)公開、東宝の「ゴジラ」は白黒映画でした。アンギラスが登場する「ゴジラの逆襲」(昭和30年)も白黒です。ゴジラに色がつくのは、7年後の「キングコング対ゴジラ」ですが、当時の人々は映画のポスターや雑誌の記事などで、ゴジラの色をすでに何となく知っていたかも知れません。
 
Colorize Photosは、白黒の写真に色をつけてくれるサイトです。縦の線は、左右に動かすことができるので、処理前と処理後を1枚の写真上で確かめることもできます。
 

私の皮膚や背景のホワイトボードの色は微妙に違いますが、空は青く、牛は牛のような色に彩色されて出力されているようです。草もそれらしく、緑の部分と穂先の茶色い部分が分けて色づけされています。海も青くなります。
 
この「着色作業」を行っているのはシアトルのArgorythmia社の深層学習(ディープラーニング)のアルゴリズムです。
 
モノクロ画像を着色する技術については日本でも早稲田大学で研究が行われているようで、ウェブで公開されています。
 
白黒の映画や古い写真に色をつける技術は以前からあって、主に人が職人技を駆使して色を決めています。デジタル技術の進歩で作業が楽になったと言いますが、やはり映画の着色などは大変な作業のようです。
 

好みはそれぞれで、「カサブランカ」のような名画がカラー化されると、モノクロで働いていた想像力が刺激されず、趣がないと感じる向きもあるようです。白黒写真の着色は、昔の様子を生き生きと「再現」してくれますが、”職人”の腕が悪いと違和感たっぷりの作品になってしまうこともあるようです。
 
人でなく、アルゴリズムに彩色させるには、何はどんな色というのを学んでおいてもらう必要があります。グレースケールの白黒画像から、ここは海、これは浜辺にいる鳥、ここは空と区別して、それぞれの色を決めるのですが、天候や季節、時刻によって同じ場所の同じアングルの写真でも色はまったく違いますから、必ず正解の色が出るとは期待できないでしょう。”職人”が着色した古い写真は、本当の天然色写真のように見えます。
 

画像解析技術の応用の可能性

しかし、白黒写真に色を塗る技術は、単にノスタルジックな気持ちを揺り動かすこと以外にも活用できるようです。ここに写っているものが何か機械に分かるということは、暗視カメラの映像を24時間365日、機械に監視させ続けて、何が写ったか注目させ続けることができることを意味します。この作業を人間がやるとなると、事件や事故が頻発する場所なら別ですが、何の異常も起こらない映像を注目し続ける苦痛は想像を超えています。
 
監視カメラに交通事故や強盗事件が写っているだけでも、その後の捜査や裁判で役立つでしょうが、機械が常に見張ってくれていて、異常が起こったら緊急通報してくれたら、救命に役立つ可能性があります。
 
もちろん、「偉大な兄弟(ビッグ・ブラザー)」に対する警戒心は忘れてはなりませんが、夜道で高齢者が倒れた様子をカメラが撮影しているだけなく、カメラ(機械)が異常を察知して、救急車を呼んでくれれば、命が助かる可能性もあります。それに、写っているのが何か分かる機械は、例えば視覚障がいの人々に役立つ機器に進化する可能性もあります。
 
ところで、白黒のTV番組「ウルトラQ」(1966年)の「ガラダマ」と「ガラモンの逆襲」に登場した宇宙ロボットのガラモンは、魚の顔を正面から見た図を参考に考案された不気味な顔をしていますが、色は分かりません。
 
どう見ても同じぬいぐるみを使ったピグモンが、「ウルトラQ」の直後に放映されたカラー作品「ウルトラマン」(1966年)に登場します。人間の味方であるピグモンは、赤いのです。後に、雑誌や書籍、玩具店で売られる模型などで、ガラモンも実は赤かったことが判明します。
 
そこで今回紹介したColorize Photosで、ガラモンのモノクロ写真を試してみました。当然ながら、Argorythmia社のアルゴリズムは、ガラモンが赤いことは知らなかったようですが、何となく赤っぽく見えなくもなくて、少々驚きました。
 
参考情報