ニューヨークの新聞「New York Times」(ウェブ版)の毎年恒例になっている旅のガイドに「52 Places to go」があります。都市にはじまり、辺境の地、ヒーリングスポットや美術館などの建築のほか、「えっ、ここが!?」というような意外な場所も提案しています。まさに世界中から選りすぐりの「ベストオブベスト」といえるでしょう。

 
2015年版の「52 Places to go」では、第5位に南米チリの「アタカマ砂漠の天文台」が紹介されています。日本でもこの夏、天体ショーの記事を多くみかけましたが、「星々の光」を観ることが、今年の世界の流行になっていたのかもしれません。
 

そのアタカマ砂漠での光と記憶を巡る「意識の旅」を描いたのが、南米ドキュメンタリー映画の巨匠、パトリシアス・グスマン監督の『光のノスタルジア』です。

https://media.style.co.jp//wp-content/uploads/2015/10/hoshi-b2.jpg

 
標高が高く空気も乾燥しているアタカマ砂漠には、天文観測拠点として世界中から数多くの天文学者が集まってきます。しかしその一方、ピノチェトによる独裁政権下、政治犯として捕われ虐殺されたひとびとの遺体が埋まっている場所であることは、あまり知られていません。
 
宇宙の起源を求めて天文学者たちが遠い銀河を探索するかたわらで、行方不明になった肉親の遺骨を捜して、砂漠を掘り返す家族の姿。永遠とも思われる天文学の時間と、愛する者を失った遺族たちの止まってしまった時間。天の時間と地の時間が、標高5,000メートルを超える天文台で交差します。
 

何億光年の彼方から届く星からの光を見るとき、私たちは、愛するひとに思いを馳せることが往々にしてあります。その瞬間、距離の長さは思いの深さに変わり、光は希望へとつながっていくのです。
 

10月から12月にかけて、日本でも明けの明星やふたご座流星群を見ることができます。星空を眺め続けていると、宇宙の時間と私たちの時間の差に気づき、意識がひろがっていくことを感じるはずです。グスマン監督が『光のノスタルジア』で描きたかったことの断片も、星空から拾い集めることができるかもしれません。

 
 

☆ ☆ ☆

 
 
 


 

■『光のノスタルジア』
10月10日(土)より
岩波ホールほか全国順次公開
配給:アップリンク
©Atacama Productions (Francia) Blinker Filmproducktion y WDR (Alemania), Cronomedia (Chile) 2010
 
■『光のノスタルジア』公式サイトほか
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/nostalgiabutton/
 
■ 関連サイト 
平松正顕氏「アタカマ砂漠で見上げる空」(「web DICE」より)
「考えるあかり」でもおなじみの国立天文台チリ観測所・平松正顕氏による『光のノスタルジア』公開記念連載です。
http://www.webdice.jp/dice/detail/3233/

 

■「考えるあかり」関連記事
「六本木ヒルズ屋上から望む広い夜空」(2015.9.17)
街明かりで明るい都心でも、高い建物の屋上からは広い夜空が見えます。六本木で毎月開催されている星空観察会をご紹介します。
https://media.style.co.jp//2015/09/2738/
 
「流れ星に、願いを。」(2015.7.31)
夜空を光りながら落ちていく流れ星を観察してみませんか。8月は三大流星群のひとつ、ペルセウス座流星群が見られます。観察のコツと、流れ星に隠された秘密とは?
https://media.style.co.jp//2015/07/537/

 
 
文:和坂康雄