ディスプレイの前に立って動作をすると、それに合せて映し出される画像が変化する、そんなインタラクティブな技術を使った展示が最近ではいろいろなところで見られるようになりました。ニューヨーク科学博物館では、そんなインタラクティブ技術を応用した最新の展示展示コーナー「Connected Worlds」を公開しています。

 

 

「Connected Worlds」では、高さ38フィート(約11メートル)、全体の面積が2300平方フィート(約213平方メートル)もある巨大なスクリーンに、ジャングル、砂漠、湿地、渓谷、ため池、平野の6つの環境をテーマにした様々な生き物たちがアニメーションで映し出されます。子供たちが画面に向かって、生き物をさわろうとすると、その動きに合せて動いたり変化したり、ディスプレイの中にまるで別世界があるような感覚が味わえます。

 

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中でも圧巻なのはバーチャルの滝で、本物の水のかわりに大量の光が流れ落ちる光景が見られます。あまりに神々しい風景に最初、子どもたちはただ見とれるばかりですが、だんだんと近寄って、そこにあたかも水が流れているかのように光をすくってみたり、飲むしぐさをしてみたり、なんとか触れてみようと試みます。光そのものには感触はありませんが、滝として流れることで、子どもたちはそこにある何かを感じるのでしょう。

 

展示の企画と構成を手掛けたデザインI/Oによると、子どもたちがバーチャルな生命に与えたアクションに対して、その場で反応が見られるだけでなく、どんなアクションがどれだけあったかも蓄積され、バーチャルな生命体全体の変化につながるよう設計されているそうです。つまり、動物にエサをあげると成長し、逆にいじめると数が減ってしまう。自分のアクションやジェスチャーによってどんどん環境が変化することから、子どもたちは人が環境に与える影響の大きさを考えるようになるというわけです。

 

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壮大な自然のシミュレーションとも言える「Connected Worlds」の中に生きる、バーチャルな生命体のフィードバックについては、サステイナビリティ学をベースに設計されていて、実際の世界にどのような影響を与えるかについても含めた調査が行われています。合わせて、デジタル技術のもたらす効果についても研究されていて、ここでの成果が今後、他の科学博物館やエンターテインメントな場でも再現されるようになるかもしれません。

 
 

##関連リンク
NYSCi New York Hall of Science(ニューヨーク科学博物館)
ニューヨークのクイーンズにある科学とアートをテーマにした体験型博物館。様々な科学分野による450種類以上の研究展示物があり、子供から大人まで楽しめる。
 
design I/O
インタラクティブな作品を企画開発からデザインまで手掛ける研究所。デジタルサイネージやプロジェクションマッピングなど、デジタルと光技術を扱う様々な作品を発表している。
 
サステイナビリティ学(Wikipedia)
社会が直面する地球的規模の問題について、持続可能性(サスティナブル)のある方法での解決を目指す学問。地球システム、社会システム、人間システムの3つに注目し、それらの相互作用を主な研究対象としている。

 
 

text: 野々下 裕子