アップル・ウォッチに代表されるように各社がスマート腕時計を売り出しています。しかし人が指で操作するには、腕時計の文字盤は小さすぎはしないでしょうか?
 
カシオの腕時計の中には、デジタル・ウォッチの下に電卓のキーパッドを配したものもあります。指先やペン先で数字キーを押して計算機として使えるほか、データバンク的に電話番号などの情報を登録しておくことも可能です。災害時など、スマートフォンの電池が切れてしまうと、電話番号を殆ど暗記していなくてお手上げという方には安心かも知れません(財布に、電話番号を油性マジックで書き込んだテレフォンカードを忍ばせておくのも良いかも知れません)。
 
アニメの「スーパー・ジェッター」や、特撮TVの「ウルトラセブン」を見ていた世代には、腕時計に向かって話しかける姿は不自然ではないでしょう。音声インタフェースが一般化すれば、腕時計の小ささが問題にならないのかも知れません。でも周囲に聞かれたくない内容は、ひそひそと腕時計に語りかけなくてはなりません。「流星号、応答せよ!」「ウルトラ警備隊本部、応答せよ!」と元気に腕時計に向かって喋るとなると、機密情報がだだ漏れになってしまいます(流星号もウルトラ警備隊も知らない人は、すみませんがこの段落は読み飛ばしてください。本稿の本筋とは関係ありません)。

 

デジタル・ネイティブと呼ばれる世代であっても、中年期を過ぎれば老眼鏡の世話になり、体、わけても指先が昔ほど自由に動かないことを思い知ったりするでしょう。また、指先の大きさだって、今の中高年と今の高校生で、それほど極端な違いはないはずです。ゆくゆく、爪の一部を伸ばして巧妙にカットしたり、あるいは樹脂製の付け爪をして、細く削った「爪」の先でスマートウォッチに対するタッチパッド入力を行うようになるとも、今の段階では思えません。

活動量計(トラッカー)などのウェアラブル・デバイスは、iPhoneなどスマートフォンやクラウドの普及に呼応して増えました。UI(ユーザインタフェース)の部分は、スマホやPCの画面やキーボードを使うことで、ウェアラブル機器そのものの大きさ(や電力消費)は抑えてしまうことができます。

 

腕時計型にして小型軽量化を進めると、ユーザインタフェースと同時にバッテリーが問題になります。中には腕時計をしたまま入浴したり眠ったりする人もいますし、必ず外す人にとっても、外すたびにminiUSBケーブルをつないで充電しなければならないとしたら、面倒なことこの上ありません。酔って帰ってそのまま寝てしまい、充電し忘れたら、翌朝は腕時計なしで過ごさなければならないとしたら我慢ならないでしょう。
 

 
Rufus Labs社(ロサンジェルス)のRufus Cuffは、「大きな」ウェアラブルです。手首に装着するのですが、OSはAndroid。3.2インチのタッチスクリーンに、1GBのメモリ、Wi-Fi、GPS、カメラ、マイクロフォン、ストレージ容量は8GB。手首に取り付ける「小さな」タブレットです。画面が大きいので、指先で操作することも可能ですし、そもそも画面が見やすくなっています。
 
当初、この製品はIndiegogoで資金調達をするなど、コンシューマー向けのハイテク・ガジェットとして開発されていたようです。今でも同社サイトではコンシューマー向けにも販売(プレオーダー)されています。339ドルなのでApple Watchよりは相当安い価格です(ストレージ容量が増えると値段が上がります)。
 
しかし、長袖のワイシャツの袖に隠れるとも思えない大きなRufus Cuffを手首につけて生活する人が大勢いるというのも想像しにくい光景です。Cuffは、カフスボタンのカフで、ハンドカフ(handcuff)だと「手錠」という意味になってしまいます。
 

同社は、法人市場に目を転じています。ウェアラブルというと、メガネ型のGoogle Glassが大きな話題と期待を集めましたが、そのときにも一般のコンシューマーが奇妙なメガネを装着して街を闊歩するだけでなく、警察官や医師、さらにはフォークリフトの操縦士などさまざまな業種の人が、仕事に使うだろうと予想されていました。
 
工場でも倉庫でも、飛行場や工事現場でも、宅配事業でも、コンピュータが役立つことは疑いありませんから、華奢なパソコンがオフィスや家庭に普及していた頃から、ハンドヘルド・コンピュータという無骨で丈夫な小型コンピュータが業務用として開発され普及していました。落としても簡単には壊れない代わりに、片手で持ったり、持ち運ぶ際にはポケットに入れたり、首から提げたりしなければなりません。
 
一般に業務用の機器は、頑丈で信頼性が高い代わりに高額で、例えばバーコードのスキャナですら何万円もするものがあります。Rufus Cuffは、手首に装着できるので、両手を使った作業の邪魔になりません。機能はほぼスマホやタブレットと同じですから、バーコードも読めますし、専用のアプリもインストールできますし、通話もできます。
 
Apple Watchなどと違って、仕事が終われば、手首から外して、翌朝までは使わずに充電することができます。Rufus Cuffは、仕事終わりや朝のジョギングには大きすぎますが、仕事をする上ではそれほど邪魔になることはなさそうです。身につけたまま入浴したり就寝したりする人はあまりいないでしょうから、バッテリーの問題も目立たなくなります。iPhoneを手首に取り付けるホルダーが安く売られていますが、業務用にはRufus Cuffの方が安心でしょう。
 
すでに、SIMなしのWi-Fiモデルなど、スマートフォンやタブレットは業務用のものが数多く登場しています。ウェアラブルにも業務用にさまざまな活路があるのではないでしょうか。
 
参考情報:
Rufus Labs

Rufus Cuff now available to pre-order… the smartphone you wear on your wrist

Rufus CEO: ‘We won’t need smartphones in 10 years’

Rufus Cuff: First impressions of the phone-sized wearable

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